ピニオンロックナットの締め付けについて

img_20140426T210048441

 

ピニオンロックナット(コンパニオンフランジナット)の締め付けは、ナントカNmでOKという単純なものではなく、 ピニオンギアを支える大小ベアリングのプリロードを考慮する必要があります。

ナットの締め付けに対し、逆方向に突っ張るのがディスタンスピースという部品で、 テーパ形状のベアリングレースとベアリングに適切なプリロードをかける働きがあります。

ベアリングへのプリロードは、コンパニオンフランジのナットの締め付け具合で調整し、ピニオンギアを回転させ摺動抵抗を測り確認します。

 

【ドライブ・ピニオン・ベアリング・プリロード】(整備書抜粋)
ロックナットを
128~284Nm (13~29kgf・m)
にて締め付けた時、
0.9~1.3Nm (9~14kgf・cm)
※オイルシール無し

【ロックナット締め付けトルク】
117~176Nm

 

ナニが難しいって、ディスタンスピースが締め付けトルクを吸収する構造になっているところで、 仮に120Nmで締め付けた後ロックナットを緩め、改めて同じトルクで締め付けると、 先ほどの締め付けで縮んだディスタンスピースをまた0Nmから120Nmかけて縮める事になりますよね?

なので、大事なのはベアリングプリロードを満足させる締め付けナットの位置ではないかと。

トルクレンチで締めてみて初めてわかったのですが、少しづつトルクを増やして締め付けていっても、 それはディスタンスピースを縮めるトルクであって、プリロードを再現する数値ではない感じがします。

要はナットの締め付けトルクは「成り行き」って事ですね。

また、ピニオンプリロードが出ないからと、より高い締め付けトルクをかけていけば、ベアリングを破損させる可能性がありますし、 どんな方法がベストなのか非常に悩ましいところ。

 

というわけでいろいろ確かめてみる。

1.ディスタンスピース単品のつぶれ
ケースには入れず、 ピニオン単品にベアリングやフランジを組む。
ロックナットを徐々に締め付けていくと、120Nm辺りからトルクが逃げていく感触があったので、 ディスタンスピースのつぶれるトルクはココでしょう。(個体差はあるかも知れない)

以降、120Nmからトルクが上がらないままどんどん締め付け角度は増えていき、ディスタンスピースは潰れていきます。

2. ディスタンスピースを抜いて締め付け
ロックナットを30Nm位で締め付けただけで、 コンパニオンフランジはほぼロック状態になった。
ということは、ロックナットの締め付けトルクは、ディスタンスピースあっての数値ってことですね。

3.NB2デフ各測定値(ユーズド)
・ピニオンハイト (ベアリングキャップ平面~ピニオン上面)
63.93mm(9.95角アルミ棒含む)

・ピニオンスペーサー
3.35mm(シックネスゲージ実測)

・ロックナットゆるみトルク
170Nm

・ベアリングプリロード
2.5kgf・cm(オイルシール付き)

・ピニオン先端~ロックナット上端(締め付け後)
3.95mm

・ピニオンスプライン端面~ディスタンスピース上面
56.3mm

・ディスタンスピース単品高さ
47.8mm
img_20140426T210049534

4.まとめ
ロックナットの締め付けトルクは「成り行き」なので、プレート型トルクレンチは必要。
締め付け前にディスタンスピース無しで組み、ロックナットを締め付けて、プリロードが厳しいところで止める。
で、ロックナットとピニオン先端(ネジ側)の高さをあらかじめ控えておけば、締め付け過多によるベアリング破損は防げる。
また、このタイミングでピニオンハイトも確認しておく。

結論として、感覚的なところが大きく、「こんなもんだろう」という世界のようですね。

 

新品のディスタンスピースを締めつける場合(自分用メモ)

最初のうちナイロンの抵抗でナット(ソケットサイズ26)はスルスルと入って行かないが、普通サイズのソケットレンチで締まる。

ナット側のベアリングがディスタンスピースに当ると、普通のレンチではそれ以上回らなくなるので、MAX280Nmのプレート型トルクレンチに交換。

まだこの時点でベアリングにプリロードはかかっていないので、コンパニオンフランジは上下に5mm程動く。(取り外したディスタンスピースと比較すると、新品は約5mm程高さがある)

ココからナットを少しずつ締める → ダイヤルゲージで上下のガタを確認する をダイヤルゲージの振れが無くなるまで繰り返す。
ディスタンスピースをつぶすのに、150Nm程のトルクがかかっていた。

振れ「0」からは回転抵抗を確認しつつ、少しずつトルクレンチで締めていって「ソコソコ」の抵抗になれば作業終了。

ベアリングのバックラッシュが「0」になれば、必要以上のプリロードは不要。
回転トルクが高くなるポイントは、ベアリングロック付近なので追い込むのは危険だと思う。
上下のガタが無くなってから今回は45度程締めつけて終了。

以上の手順でマニュアル値(0.9~1.3Nm)辺りのトルク値になっているかと。
ただし、マニュアル値はオイルシール無しの記述があったので、これよりトルクが少しくらい高くても大丈夫だと思う。

 

・ピニオン先端~ロックナット上端(分解前)

 

機械式LSD 「カーツ製」 の分解と、効きを弱める組み方

先日作ったSSTにデフをセット。
プレート型のトルクレンチでゆっくりトルクをかけて行き、 まずはデフォルトのイニシャルトルク測ってみます。

ズルッと滑った時の値は約70Nm(7Kg・m強)。
SSTにささるソケットは12.7sqのHEXでサイズは10。
img_20090728T200949796


分解
で、おもむろに分解開始。1発目のゆるめはSSTにセットして。 4本全てゆるんだら作業台の上で分解します。
img_20090728T200950968

ケース蓋へのテンションが無くなった位置です。結構なプリロードですね。
img_20090728T200951796


パカッと開いたところ。蓋のセンターにはサイドギヤ用のメタル?が張り付いてました。
img_20090728T200952437 img_20090728T200953250

サラバネ。クラッチプレート側に反っています。
img_20090728T200953984 img_20090728T200954671

クラッチプレート(外爪)。ケースの溝にはまってます。逆に内爪はサイドギアにはまります。
img_20090728T200955046 img_20090728T200955421

 

外爪→内爪→外爪→内爪→外爪→内爪で片側計6枚のクラッチプレートです。
img_20090728T200955890

 

プレッシャーリングも外爪と同じケース外側のミゾにキチキチな感じで入ってます。
img_20090728T200956468 img_20090728T200957093

プレッシャーリングを外すとサイドギア→ピニオン&ピニオン十字軸が外れてきます。
img_20090728T200957703 img_20090728T200958609

反対側のプレッシャーリング~クラッチプレートを外したところ。サラバネが見えますね。
img_20090728T200959031


組み立て(LSDの全体的な効きを弱くする方法)
まず、サラバネの方向を確認して (デフ内側に反っている)組み込み。
元々外爪内爪外爪内爪外爪内爪 (外内交互) に入っているクラッチプレートを

外爪外爪 内爪内爪 外爪内爪の順で入れます。

→プレッシャーリング→サイドギアを順次入れて...
ピニオン&ピニオン十字軸→サイドギア→プレッシャーリングの順に組んでいきます。
img_20090728T201000218 img_20090728T201000718

 

以降、反対側も同じようにクラッチプレートの順番に注意して組んでください。
奥側と順番が逆になります。

まず内爪
img_20090728T201001156 img_20090728T201001609

外爪
img_20090728T201001968 img_20090728T201002390

内爪の次に内爪
img_20090728T201002828 img_20090728T201003234

外爪の次に外爪
img_20090728T201003640 img_20090728T201003984

サラバネ(中心の浮く面が外側になります)で、部品の組み込みは終了。
あとはケースの蓋をして、4本のM6ネジを10Nmで締めつけます。
img_20090728T201004359 img_20090728T201004734


組み終わってからイニシャルを測ると、約60Nm。デフォルトに比べ、10Nmほど下がりました。


イニシャルトルクを落とす方法
クラッチプレートにWPC加工を施す、とカーツさんから教えていただきました。
イニシャルトルクはカーツの場合、出荷時6kg~7kg程度。
慣らしが終わる時点で約2kg程落ちて5kg程度になるそうです。


数度のオイル交換をしつつ使ってきましたが、ターンインでアンダーが出やすい、アンダー→オーバーステアが顕著など、機械式独特の動きはあるものの、程度はデフォルトより明らかに小さいです。