ボルトストレッチゲージ(オリジナル企画)

・募集に向けて
この企画を進めようと思ったきっかけはコレ。

懐かしきGARAGE502企画で入手したK1コンロッドです。

 

このK1の他、キャリロ、ショップオリジナルH断面のものにもよく採用されているのがARPの強化ボルトで、締め付けにはトルクの他に「伸び(ストレッチ)」も管理出来る様になっています。

ARPのカタログでは汎用のコンロッド専用ボルトがラインナップにあり、それぞれのサイズ別に指定トルクで締めた後、ボルト自体の伸びもこの範囲に入っているかチェックしてねといった感じの表が掲載されていました。

で、カタログにはその伸びを目視できる専用の測定工具が掲載されていて、これ欲しい!と思ったのですが、ネットでもそれ程流通しておらず、海外サイトから購入するしかなさそうで、しかも結構高い。

 

ただのダイヤルゲージホルダーにそんなに出せないし(後々ARPモノを買う羽目になるのですがw)、ダイヤルゲージをはめるホルダーを作れば良いのでは?と、製造をお願いするところに相談すると、
「図面さえあれば作れますよ。」
と、価格的な面も含め前向きなお返事をいただきました。

という事で、と希望者を募り、最低ロットが集まれば発注する運びとなりました。

 

・設計
ARPのストレッチゲージを使っている画像を色々見てみると、ゲージをボルトにセットして、手を離してもその状態を保持している様に見えます。

ここで初めてダイヤルゲージにスプリングが仕込まれていて、どちらかというとホルダーよりこちらの方が特殊だって事に気付くワタシ(笑)

ダイヤルゲージのストロークやバネレートとか、専用品はどうなっているのだ?と気になって仕方なくなり、まずは模倣から始まるのだと自分に言い聞かせ、海外パーツを仕入れる事にめっぽう強いみんカラのお友達にお願いして、ARPのモノを仕入れていただきました。

 

専用ケースに入ったそれが届いて感動の対面を果たした後は、バラして各部のチェックを行います。

ダイヤルゲージを固定するイモネジも何もかもインチサイズで戸惑う(笑)

秤を使ってゲージのバネレートに当たりを付け、ミツトヨのダイヤルゲージに仕込むバネを数種集めて確認し、自由長、線間密着とゲージのストロークの兼ね合い、もちろんレートも考慮し、良い感じのモノを選定しました。

で、いよいよ本腰を入れてのホルダー設計です。

ARPのホルダーを参考に、もっと使い勝手が良くならないかとか、オリジナルな感じを少しでも醸し出せないか?とか、まぁ色々考えて気の済むまで3面図をCADで作り、製造先にファイルを送りました。

あーやれやれと思っていると、程なく返信があり、そこには驚愕のコメントが!

「3Dデータでお願いします。」

詰んだ...コレは確実に詰んだ...とフリーズし、その日は寝た(笑)

 

・3Dデータの作成
後日、2Dを3Dデータに変換するソフトとか無いかなと調べていると、フリーソフトで3Dデータが作れるFUSION360というソフトを発見。

2Dには無いコマンドで一気に面取り出来たり、ねじ山を描画出来たりしてなかなか面白く、もしかしたらモノになるかも?と少し希望が出てきたのと、この企画に賛同していただいた方をかなりお待たせしていたのが原動力となって、3Dデータを何とか作りました!



追い込まれると何とかなるもんですね(笑)

 

データをチェックいただいて、念のためテストロットを1個作ってから量産へと事を運び、ファーストロットがデリバリー出来たのは4月下旬。

お待たせした甲斐あって、製品の精度、質感共に十分満足いただけるものが出来たと思います。

末永くご愛用いただければ幸いです。