ROMエミュレーター 「ERT」の概要

K-specification Original(K-スペ) さんからの提案

ERTについて個人的に興味があり、K-スペさんとメールのやり取りを何度かしていたのですが、実際使うのが1番じゃありませんか?という話になって、私がロードスターでの動作確認とERTのハードとソフト使い心地などをモニターさせていただく事になりました。

お試し出来るなんてとてもありがたいご提案です。
私でいいのかなぁ...と頭をよぎりましたが、めったにない機会ですのでお言葉に甘えることにしました。
一般ユーザーの立場としてモニターさせていただきますので、誇張せず、正直な意見をフィードバックしようと思います。

程なく届いたERT。
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4連ROMチェンジャーと同じく、基盤のパターン設計はもとより筐体への収まり具合など、 個人レベルでの製品とは思えないクオリィティーの高さです。

事前にダウンロードしていた2部構成の説明書を何度も読んで、その構成やソフトの使い方を理解してから動作確認に臨みます。 壊すとシャレにならないし(笑)

では、取り付けの前に、ERTの出来る事をまずは紹介。

 

ERTの概要
いきなり例えになりますが、仮に私が某氏からROMチューンの依頼を受けたとします。
そこでやる事といえば、

1.車の仕様と「どんな感じにしたいか」など要望を確認。
2.氏の車にテクエジなど取り付け、空燃比等各ログをとって現状を把握する。
3.ログを凝視して、燃調と点火時期をNA8C専用FIREエディターで書き換える。
4.レブリミッター等、バイナリエディターで書き換える。
5.出来たバイナリファイルをロムライターでEP-ROMに焼く。
6.ROMを装着、手順2.に戻って納得出来るデータになるまでループが続く(笑)

データの違いをはっきりと体感するため、多少極端なデータを4種類作って4つのROMに焼き、 ROMチェンジャーで切替ながら実走して確認すれば多少時間は節約できます。
しかしデータの数だけEP-ROMは必要ですし、結構な手間であるのは確かです。

ただ、手順2~6を実践すればする程、実走データが蓄積されるので時間の許す限りやってみたいのが正直なところ。

そこで、このERTを導入するとどうなるか。

実走しながらECUがアクセスしているバイナリデーターを更新できるので、納得できるデータ(追い込んだデータ) を短時間で作る事が出来ます。
要は手順3.と4.とループが無くなり、ROMライターでデーターを焼く回数も1回。使うEP-ROMも1つという事なのです。

限られた時間、それすらも確保しにくい私にとって、効率よく、よりいいものが作れるERTは、言い換えれば「時間を作り出す」 ツールと言えるのではないでしょうか。

 

ERTとECUをつないでみる
まず手持ちのECUのEP-ROM(以下ROMと表現)を外し、そのソケットにROMプローブを挿す。
プローブ反対側のコネクターをERTに挿す。
ERTのROMソケットにECUから外したROMを装着。
この時点でECUに装着されていたROMを外に引き出した状態となり、 ERTに電源を供給すればECUはROMにアクセスしエンジンがかかります。
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ERTオンラインエディターをインストールしたPCとERTをRS232Cケーブルで接続し、互いの通信を確立した後、 ECUに装着されていたROMと同一のデータ(.binファイル)をPCからERTのRAMに転送する。
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これでERTをROMエミュレーターとして使う準備が出来ました。

 

データーの流れ
ERTオンラインエディターでモード切替(ROMモード→エミュレーションモード)のコマンドを実行すると、 ECUのアクセス先がROMからERTのRAMに切り替わり、ECUはROMに依存しない状態(転送したRAM内のデータ) で動作する事になります。
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あとはPCに表示されているマップの数値を変更すれば、RAM内のデーターに即反映されるので、納得いくまで何度でもデーター変更し、 その結果を実走で確認すれば良いわけです。
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さて、納得できるデーターが出来たと仮定し、そのbinデータを「GENrom-1.bin」とします。
ここでエンジンを切ってERTの電源を落としてしまうと、せっかく作った「GENrom-1.bin」データーが消えてしまいますので、セ- ブする必要があります。

ERTにはRAM内のデータを任意のタイミングで保存できる領域、EEPROMが組み込まれているので、PCで 「ERTデータを起動データー領域に保存」のコマンドを実行すれば「GENrom-1.bin」 はERTのRAMからEEPROMに保存できます。
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そして、PCに表示されているマップデータ(.binファイル)を任意のフォルダにセーブすれば一連の操作は完了、 エンジンを切っても差し支えない状態になります。

再びエンジンをかけた場合、ECUは初爆から数秒間ROMにアクセスしていますが、その間にEEPROMから自動的に 「GENrom-1.bin」がRAMに転送されています。
EEPROM→RAMに転送(数秒間のオートロード)が完了すれば、ECUのアクセス先がRAMに自動的に切り替わり、 リアルタイムにデータ変更できる状態となります。
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机上編では各コマンドに対しデータがどの様に動くかを重点的に書きましたので、多少複雑に感じられたかも知れませんが、 実際に使ってみるとERTオンラインエディターが使いやすいシンプルな構成であるのと同時に、マップ編集機能も「こう出来たら便利だな~」 という所がキッチリ押さえられていますので、2、3度使えばすぐ慣れてしまうと思います。

細かいハナシはこの辺りで。

e-manage

車雑誌等でよく紹介されているトラストのe-manage。
従来の燃調コントローラーと同じく、エアフロ電圧を変更して燃料を増減させるものですが、回転数とエアフロ電圧(またはスロットル開度)のマップを用いて制御するものなので、結構細かなセッティングを可能としたサブコンです。
e-manageの性能を最大限発揮させるには、本体以外にインジェクターや点火ハーネス、サポートツールが必要ですが、逆にこれがないと従来の「エアフロコントローラー」と何ら変わりがありませんので、すべてを揃えるつもりでいたほうが良いと思います。
最近までは、詳しい事も分からず全然気にならない存在でしたが、スロットル開度+回転数のマップで燃料増量する「簡易スロポジ制御」が出来ることを知ってからは情報収集の毎日(笑)
しかし意に反して公開された情報は少なく、どんな制御をしてどこまで出来るのかが分からず、「エアフロコントローラー」の印象をぬぐえませんでした。
後は実物を手に入れて、自分で確認するしかありません。
そうと決まれば出来るだけ安く手に入れるべく、某オークションで網を張っていると、MR2のブーストアップデータが入ったハーネスキットが出ていたので、少し気合を入れて入札。無事私の手元にe-manageが届いたのでした。

 

接続ハーネス
e-manageのハーネスキットは、その車種にあわせて分岐線や信号入力線をあらかじめ結線したもの。
MR2(sw20tarbo)のECUコネクターはNA8Cシリーズ2と形状が同じですが、当然ながら各ピンの信号は違いますので、流用するにはハーネスのつなぎ換えが必要です。
NA8Cに必要な配線を洗い出すと、18ピンコネクターで線が2本余りましたので、これを不足していた12ピンの点火用に流用してハーネスキットをケチる(笑)

18ピン下側の緑/赤と白/赤線を抜く。
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12ピンのイグナイターCH1入出力につなぎ込み。
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点火&インジェクターハーネスか、ロードスター用のハーネスキットをお持ちなら不必要な作業ですが、他車種流用の方はご参考に。
必要な配線を揃え結線が終われば、ブザー等で導通をチェックしてから車体に装着します。

 

本体設定
・エアフロ設定ダイヤル:3-A- 2(MZ_HW2)
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ジャンパー設定
・JP1:1-2
・JP2:1-2
・JP3:1-2
・JP4:オープン
・JP5:オープン
・JP6:オープン
・JP7:1-2

サポートツール設定
e-manageは空燃比計の出力が0~5Vなら接続して、マップの読んでいる位置のA/Fを確認することが出来ます。
使用するコネクターはBOOSTと書かれたコネクター。
左の白線がA/F入力。右の灰色線がアースです。
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テックエッジでWBlin出力は、0~5V出力に対して9~19の空燃比がデフォルトですので、それをそのまま使用。
パラメーター設定は以下の通り、9と19を入力します。
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これで各マップの任意の場所で、その時の空燃比を確認できます。
あくまでe-manage上のマップですので。

 

結線図

NA8C(BPS5)
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NA6CE(B63H)
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NA8C(BPF3-881)
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NA8IGF入力